【活動報告】ハイデガーについてゆるく学ぶ会

 

11月の哲学カフェでは、「ハイデガーについてゆるく学ぶ会」の第2回目を実施いたしました。

主著「存在と時間」について2時間に収まる範囲で、駆け足で全体像をサラリと見ていくような

内容になりましたが、20世紀最大の哲学者と呼ばれる人物像についても話題は広がりました。

 

ハイデガーについて

  • ドイツのメスキルヒ生まれ、人口8000人ほどの小さな 村。素朴な生活環境の中で育ち、ベルリンのような都市が嫌い。
  • プロテスタントの牧師になろうと神学校で20歳ごろまで学んでいたが、啓示?を受けて哲学者に転向した。
  • 主著「存在と時間」を1927年に出版。現象学や解釈学の手法も活用して書かれた学術的には超一流の著作。
  • ミシェル・フーコーやジャック・デリダ、ハンナ・アーレントに影響を与えた。
  • 哲学者としての賞賛の反面、ナチズムへの関与や反ユダヤ思想、弟子のハンナ・アーレントとの不倫などスキャンダルにも事欠かない。
  • 黒ノートの存在。30代から晩年にかけて書かれた手記。反ユダヤ主義。リベラル思想やコスモポリタン思想への嫌悪感が濃厚に出ている、現代にはかなり過激な内容。

当時の学術的手法を使いこなし、膨大な知識でゆるぎない哲学を確立した天才である一方、人格的には都市の生活や自由主義的な思想を否定的に見る「田舎のオッサン」的な側面が非常に強く、情報収集をしていてネトウヨ的な発想に傾いていくところは中二病的な幼さもあるように思えます。

 

主著「存在と時間」について

存在とは何か ・・・ それまで永遠不滅と思われてきた存在を時間の概念の中に引きずり込んだ

絶対的な存在(神)を強く意識してきた西洋哲学は主観ー客観の対立関係で存在をとらえようとしますがハイデガーの思想では「現存在(Dasein(there being))」という、その時と場所になじむものを通して存在の意味を問いかけます。

 

現存在 ・・・ 世界内存在(In Der Welt sein, in the world being)

気がついたらすでに、世界の中で他者との関わりの中で配慮しながら日常を生きている。

ハイデガーの哲学では主観ー客観の世界観も、世界内存在から派生した副次的なものとなります。

 

世界内存在は日常の中であれこれ配慮しながら埋没して生きていますが、ごくまでに「これでいいのか」という不安を抱く時があります。そのときに現存在は「死に至る存在」として本来的自己に目覚めていきます。

死への先駆 = 本来的自己

死とは「ひとごと」ではなく自分にも必ず起こるものであると自覚すること、死への不安を受け入れることで「死への先駆」を果たすことができ、本来的な自己に目覚めることができます。

本来的な自己に目覚めた現存在は、通俗的な時間の概念からも脱却して、本来的な時間性に目覚めます。

  • 非本来的時間性(予期・現実化・忘却)・・・自己の目的実現のために色々な素材を活用して未来を予想しながら活動するイメージ。たとえば鍋や包丁などの道具を使って料理を作って食事して食欲という目的を満たすようなこと。
  • 本来的時間性(先駆・瞬視・取り返し)・・・死と生誕の間に自らを伸び広げるという仕方で存在している。死を予見しながら「生ききる」

本来的歴史性

死と生誕の間にいる固有の潜在である自覚した現存在は、生誕のルーツを自分固有の「運命」「宿命」に彩られた実存として「振り返り」「取り返す」

 

 

上記のように「存在と時間」についてサラリと見てきた後、「哲学への寄与」「言葉は存在の家」などの著作、ゲシュテルなどの概念について紹介しました。

 

ギリシア以来、あまり触れられてこなかった存在一般について哲学的な意味を与えようとし、目的論的な世界観も、機械論的な世界観をも飲み込んだその哲学は、その後の哲学者にとって影響大の大きな壁です。

ハイデガーのブラックな面を批判できても、その本丸である思想を根底から覆すようなことは誰にもできていません。

 

ハイデガーの哲学は2時間でとても理解しきれる代物ではありませんが、天才である一方で俗っぽい一面もある人物像については非常に興味をそそられるところが多いですね。ネトウヨ的な過激な発想にいたるまでの情報収集はITのない当時においては相当なエネルギーが必要ですし、その蓄積が「啓示」へと至ったのか。若い頃の生活環境や風土が「田舎のオッサン」的な人格を作ったのか。それでも天才的な思想を確立できた動機は何なのか。さまざまな事に興味が湧いてきます。

 

 

 

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