【トークイベント】演劇でまちに入り口をつくる 「東京の条件」の岸井大輔さんをお招きして

 
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弟子の投稿です。イベントの報告をいたします。

まちに住みつき、まちそのものを舞台にした演劇作品をつくるというスタイルを持つ劇作家の岸井大輔さんを富山にお招きして「演劇とは何か」という事や、東京アートポイントなどご自身の活動についてお話いただきました。

 

全体で8名程度、参加者が少なければ少ないほど面白くなる(笑)という岸井さんのトークはお互いに顔と人となりが感じられる距離感の中で楽しく盛り上がりました。街そのものを演劇と見なす「POTALIVE」、街という演劇に入り口となるLOBBYを創るなど興味深いお話をたくさんしていただきました。

当日のイベントの詳細はコチラのリンクからどうぞ。

 

頭の中に昨夜の熱気と記憶が残っているうちに書き出していますが、いざ書いてみると自分があまり理解できていないことを実感させされますが、これは一つの新しい始まりで、哲学カフェも絡みつつ岸井さんと富山との縁がここから深まっていくのだという手応えを強く感じています。

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演劇を定義する

現代において「演劇」の定義は曖昧なままである。

例えば絵画はバウハウスの教師でもあったクレーやカンディンスキーらが「線と色で区切ったもの」と定義した。そこからデザインという概念も誕生した。音楽ではジョン・ケイジが「音楽とは音である」と定義した。だが演劇にはそれがない。それを作ろう、そう25歳の頃に思い至ったそうです。

 

岸井さん曰く、演劇とは集団のあるところで生まれるものです。そして人がある場所に集まり、人と話したり、他者と関わりながら何かをしているとき、そこに演劇は成立しています。そうした人と人との直接的な営みは、ハンナ・アレントによれば「活動」と呼びますが、人の活動を対象にしているのは唯一、演劇だけです。

 

現代人はどこに集うのか

近代までは都市という場所に人が集まり、劇場という場所でオーケストラや劇作品が上演されました。さらに古い時代では村にある寺社や教会などの場所で儀式が行われてきました。

 

では現代人は都市にいるのか?同じ都市にいても人々の生活スタイルや行動範囲は実に多様です。そこで岸井さんは街に住み込み、都市にかわる「A」という場所を発見するところから自身の創作を始めます。そして「B」という、人があつまるポイントを見出し、そこで「C」という作品を発表するのです。

 

そのプロセスで生まれた「POTALIVE」(ポタライブ)などの作品で、実に興味深いものでした。さらに街という演劇に入り口を創るという「LOBBY」という作品も生まれてきました。

街に住むすべての人が何らかの演劇の中で、職業とか役割などを演じているように思われてきます...

 

まちに公共を作る 「東京の条件」

2009年、岸井さんは東京の新しい文化事業参加への打診を受けます。

「まちなかアートが介在することで人が出会い、コトが起こる場を作っていく。そのパイロット事業を手がけてほしい」

これは簡単にいうと「公共」を作れということではないかと感じたそうです。

公共とは[public]と[common]ですね。みんなという集団が、複数の人と一緒にもっているようなものです。

 

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東京を一つの劇団と見なすと、「公共」という演劇がうまくできていない。人の集まりを対象にする劇作家としては公共を戯曲として捉え直して作品を創ることができるのではないか。そうして生まれたのは上映期間3年にわたる「東京の条件」でした。

 

美意識を問う

岸井さんは東京の条件を創る過程でハンナ・アレントの「人間の条件」を戯曲と見なし、そこで語られる公共を実現しようとしました。しかし西洋世界を前提にした公共を日本にそのまま当てはめるのは難しいと判断し、九鬼周造の「いきの構造」から日本で公共を実装するための糸口を見出します。

 

日本と西洋の世界観の違いが、どのようなカタチの人の集まりを意義あるものと考えるのか。そういう美意識が強く関係することに気づかされます。それは日本でも地域によって様々です。江戸の「縁の下の力持ち、いき」あるいは「ボケ、ツッコミ、いちびり」など何をもって美しいと見なすかはその集団によります。

 

そして岸井さんは現代でも地域ごとにそうした美意識は今でも色濃く残っており、地域のお金の使い方にもそれは影響しているそうです。まちに住みついて演劇作品を創るという仕事の傍ら、色々な地域の特性や習慣を理解することは岸井さんの仕事にとって不可欠なことなのだと思います。

 

面白い話はいつまでも尽きず、大変おもしろい時間を共有させていただきました。

ご参加くださった皆様、どうもありがとうございました。

 

 

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